FC2ブログ

2019-12

パラディスの秘録 狂える者の書(タニス・リー)

狂える者の書 (パラディスの秘録) (創元推理文庫)狂える者の書 (パラディスの秘録) (創元推理文庫)
(2014/09/29)
タニス・リー

商品詳細を見る



(2015年読書感想20冊目)

タニス・リー 著 市田泉 訳
おすすめ度★★★★✩(面白いんだけれども、精神状態が微妙な時に読むと少しきついです)


「時という偉大で分厚い書物に記してほしいわ。どんなものであれ、真の願いこそ大切なのだと」(p298)
―レオカディアの言葉―

オレンジをイメージカラーに添えた、めくるめく絵画のような狂えるものたちの物語


タニス・リーの代表作と数えられる「パラディスの秘録」の原書刊行順でみる最後の一冊を読みました。今回は今までの多くがそうであったように短編集でなくて、三つの世界が絡み合う長編小説となっています。
狂えるものの書、というだけあって、まるで複雑怪奇な構造の螺旋階段越しからペンギンを見つつオレンジ色のお酒を飲んで酩酊するようなお話でした。でも、このシリーズの中でもっとも深い意味を内包したお話のように思えました。

狂える都パラダイスの中にあって、自分たちは正気を保っていると信じながらも、平然と殺人を繰り返すフェリオンとスマラの美しき双子兄妹
従姉妹に陥れられ、正常でありながら狂人とみなされて精神病院に送られたパラディの女画家、レオカディア。
激しい片恋に破れ発狂し、やはり脳病院に収監されることになるパラディスの若き令嬢、イルド。
この三つの場所と人物たちが絡み合い、一つの織物を編むような、そんなお話です。
正常とは、狂気とはなんなんなのか。美とは、醜とはなんなのか。
相反する二つの存在の意義を巧みに問いかけた、名作と言えると思います。

しかし、狂えるものの書、と題名につくだけあって、殺人や精神病院でのひどい描写などが続きます。
精神状態によっては、引きづられてしまったり、読むのが辛かったりするかもしれません。死者も数多く出ます。
ですが、面白かったです。そしてペンギンがすごい破壊力です。
陰鬱なシーンが続くだけ、最後のエピローグは鮮やかで、心が浄化されていくような感じでした。
正常人の勝利といったところなのでしょうか。ですが、その登場人物が、只中にあって本当に正常だったかなどと、誰がわかるのでしょう。
個人的に、私が愛好して所有している人形と同じ名前のついたフェリオンと、パラダイスの描写が好きでした。フェリオンとスマラがパラダイスを抜け、パラディの美しさに感動するシーンは、わたしも一緒になって感動しました。
章の最初に載っているエピグラフも効果的で、この本をまとまりよくしています。
しかし死せるものの書といい、この本といい、後半二冊はなんだかぼんやりとした夢幻のようにくらくらしてしまう、そんなお話でした。ある意味では、タニス・リーの幻視している世界をともに幻視しているのでしょう。
あと一冊、堕ちたるものの書だけ未読です。
いつかじっくりと読みたいと思います。
なかなかに感慨深い読書体験でした。
万人におすすめはできないけれど、大好きな一冊です。

スポンサーサイト



5人の王(恵庭)

5人の王 (Daria Series)5人の王 (Daria Series)
(2013/09/13)
恵庭

商品詳細を見る




(2014年読書感想50冊目)


恵庭 著 絵歩 イラスト
おすすめ度★★★★✩(面白かった! 読み始めたら一気読みです。)


「忘れるな、ヒソク。お前が他を殺してでも守りたいものがあるように、私には王として、この国を守る義務がある」(p80)
―青の王の台詞ー


マイミクさんからの借本です。いつか読みたいと思っていた小説なので、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
神の子孫である五人の王によって治められる国、シェプロン。
青の王宮に召し上げられる妹を守るために、妹に成り代わり王宮に向かった主人公のセージを待ち受ける、波乱万丈のBLストーリーです。

これは面白かった! 独特の世界観や、もとはWeb小説だったという点からくる若干の展開や文章の甘さ、雑然さを抜かせば、先が気になって仕方なく、一気に読んでしまいました。
表紙は青の王であるアジュール。格好いい!
アジュール×セージが話のメインですが、ほかの登場人物がそこに複雑に絡み合って、重厚なストーリーを展開しています。
個人的には赤の王であるギルが好きなので、セージはギルと幸せになって欲しかったな。しかし、そういうままならさが、この物語の魅力であります。ギルとか後半空気だったし。

作中で主人公のセージの立場がコロコロ変わり、また、場面や時代や夢現もコロコロ変わるので、若干読みにくさはあるのですが、読む引力と勢いのある作品です。このややこしさすら、好きな作品だなあと思わせます。
前半はシリアスな重めの話が続くのに対し、後半からは登場人物が仲良くしている描写もあり、でも基本は憎しみあっていて、その合間にきちんとBLもしているので、BL小説好きな方も、またそうではない方も読めるかなとおもいます。
しかし、年齢制限のかかるような描写は、結構痛々しいものが多いので注意です。
執着系といえばいいのかな、わかりにくい愛憎入り乱れるそんなBL小説です。

主人公のセージは、甘すぎるけど嫌いになりきれないし、アジュールは格好いいけど実は優しいお兄ちゃんっぽいし、登場人物も魅力的です。でもわたしはギルとウィロウが好きだな。癒される!

なかなかすっかり、この世界観にのめり込んでいます。
420ページとちょっと分厚いですが、文章自体は易しめなので、さくっと読めるはず。
続きも気になるので、読んでいこうと思います。
文句なく面白かった一冊です。

空飛び猫(アーシュラ・K・ル=グウィン)

空飛び猫空飛び猫
(1993/03/25)
アーシュラ・K. ル・グウィン

商品詳細を見る



(2014年読書感想43冊目)

原題 Catwings
アーシュラ・K・ル=グウィン 著  村上春樹 訳 S・Dシンドラー 絵
おすすめ度★★★★✩(4・5くらい。ハードカバーより文庫版がおすすめ!)

「もしお前が良い『手』をみつけたら、もう自分で餌を探す必要はなくなるんだよ。でもそれがいけない『手』だったら、それは犬よりたちが悪いって」(p35)
ーセルマの台詞ー

大好きな作家、ル=グウィンが執筆し、村上春樹さんが翻訳したとってもキュートなファンタジー小説、「空飛び」の感想です。以前に、続編となる「帰ってきた空飛びたち」を読了済み。こちらの「空飛び」がシリーズ第一作目です。

まず最初に、今回図書館でハードカバー版を借りて読みましたが、このシリーズはハードカバー版で読むより、文庫版で読んだほうがいいな、という印象を受けました。文庫版は色の発色もいいし、紙質も良いのですよね。

中身に関してですが、これは文句なく良かったです! 猫が好きな方が、猫をもっと好きになる素敵なファンタジーです。
あとがきに書かれていますが、村上春樹さんが、日本語として声に出して読みやすい翻訳を心がけられたらしく、長さ的にも内容的にも、読み聞かせに最適の一冊です。

お話としは、現代都市に対する風刺と、自然に対する愛情、なにより深い優しさに満ちた視線を感じることが出来て、本当に素敵な一冊になっています。
空飛び猫4兄弟が出会うことになった「良い『手』」である人間の兄妹が、とにかく優しくて、そうして猫も人間も兄妹だからか、立場を超えて同じ悩みや感覚を持っていたりして、そこから由来するクスッと笑えるエピソードなんかもあり、とにかく本当に面白かったです。
ル=グウィンの原文も素敵なんだろうし、村上春樹さんの訳も素敵。そうしてなにより、シンドラーの挿絵がとても素敵な一冊です。
全ての猫好きにおすすめしたい素敵な一冊です。
一冊目と二冊目を読んで分かりましたが、1巻から順番に、一気に読むのがお勧めのシリーズですよ。
すぐに読めるし、いろいろ考えさせられるし、とにかくいろいろな人に読んで欲しいシリーズです。

帰ってきた空飛び猫(アーシュラ・K・ル=グウィン)

帰ってきた空飛び猫 (講談社文庫)
帰ってきた空飛び猫 (講談社文庫)
  • 発売元: 講談社
  • 発売日: 1996/11/14




(2014年読書感想29冊目)

原題 Catwings Return
アーシュラ・K・ル=グウィン 著  村上春樹 訳 S・Dシンドラー 絵
おすすめ度★★★★★(好きにはたまらないとってもキュートなファンタジー。)


「私はこの屋上庭園でひなたぼっこをしながら、この子がお前たちと一緒に、自由に空を飛び回っている夢でも見るわ。それが私にとっての幸福というものなのよ」(p72)


「ゲド戦記」などで知られる、ファンタジー小説作家としては大御所のル=グウィンの描いた、とってもキュートな空飛ぶを主役にした動物ファンタジー。
猫好きの母のために贈った本を、私も読書です。
ちなみに一作目の「空飛び猫」は未読です。ですが、未読でも存分に楽しめる内容となっていました。

このシリーズ、前から気になっていたので、読めてよかったです!
空飛び猫が帰ってきたよって意味と、故郷に帰るお話だよ! という二重の意味がタイトルに込められています。
ル=グウィンってシリアスな文章を書く人かと思ったら、こういうちょっとポップな感じのお話も書くのですね。猫に対する深い愛情が感じられて、読んで数ページですっかり引き込まれてしまいました。シンドラーの描くカラーの挿絵がとっても魅力的です。

また、このシリーズの翻訳は村上春樹さんです。
村上春樹の作品には特別な感情を抱いていない私ですが、この本の翻訳はとっても良かったし、注釈やあとがきは印象的で、興味深かったです。村上春樹さんも猫が好きなのでしょうか……。
彼は他にも何冊か絵本の翻訳を担当していますよね。そういったものも読んでみたくなりました。

とにかく、空飛ぶ翼の生えた猫、なんてまさしくファンタジーならではの設定で、ところどころ風刺もきいて、でも軽く楽しく読めて、何より可愛くて、本当、読んでよかったなと思えるファンタジーでした。
猫に対する愛情が感じられる、心のこもった一冊で、ほかのシリーズも読みたいです。
一冊目を読まずに二冊目を読んでも問題なく楽しめましたが、2冊目を読んでから3冊目以降を読んだほうが楽しめるシリーズだと感じました。
とにかく、猫好きには絶対おすすめの、心温まるファンタジー小説です!
可愛い挿絵がいっぱいで、横書きで薄めの本なので、普段本はあまり読まないけど猫が好き、なんて方への贈り物にもいいかもしれません。
おすすめです。

シャドウハンター 灰の街(シティ・オブ・アッシェズ)(下)(カサンドラ・クレア)

シャドウハンター 灰の街 下 (創元推理文庫)
シャドウハンター 灰の街 下 (創元推理文庫)
  • 発売元: 東京創元社
  • 発売日: 2011/09/21




(2014年読書感想13冊目)

カサンドラ・クレア 著 杉本詠美 訳 多田由美 表紙絵

おすすめ度★★★★★(2冊目を読み終えて総評。1冊目より好き!)


善き妖精の女王がいっていたことは、やはりほんとうなのかもしれないーー愛は人を嘘つきにする。(p39)


大好きなシリーズ、全米で(世界中で?)大人気のファンタジー小説、「シャドウハンター」シリーズの2冊目下巻の感想です!

祝映画日本公開! 上巻から間をあけず一気に読んでしまいました。面白かったです!
シャドウハンターの至宝、天賜の剣を狙う反逆者ヴァレンタイン。
クラリーたちはシーリーコート(善き妖精)の女王に支援を要請するが、代わりに意外な条件を提示され……?

この表紙、だれですか! と思ったらメガネ持ってるからサイモンだと分かりました。超別人ですね。格好いいです。●●●になるとシャドウハンターの世界ではbもれなく美形になるんですって。
一巻目に比べて、二巻目は本当に面白かったです! キャラクターの会話が面白くて魅力的だし、映像が目に浮かぶような描写はさすがというか、凄いです。
1巻に登場したキャラクターたちも魅力的でしたが、この「灰の街」から登場した新キャラもいい味出してますね。マイアとマックスがたまらなくかわいいです! いきいきとした魅力的なキャラクターが織り成すアメリカでの、人外たちの戦いは本当に面白いです。外国のティーンが夢中になるのもわかります。

今回、ジェイスがかわいそうな感じでしたが、というか最後そっちに決断が行くんですか!? とびっくりしてしまいました。次作ではとってもじれったいことになりそうです。
クラリーは遂に強力なシャドウハンターに開花しましたね。その力は、ちょっと反則かも!
マグナスも終始ちょっとかわいそうでしたが、最後は報われたのかな? アレクとマグナスの2人からも目が離せません。
イザベルが影が薄かった気がして残念です。イザベルってとっても可愛いと思うので、次作の活躍に期待したいです。
それにしてもこの2作目は、本当サイモン! って感じのお話でした。もうサイモンが主役でいいような……。マイアとくっつくのかな。
三角関係に一応の終止符が打たれ、これからどうなるのか、最後の引きがたまらなく憎いです。

私があとちょっと感心したのは、各章の章題の多くが、文学作品や詩の題名からとられてることですね。
こういった細かいところから、もっと読書の輪が広がるような、そんな章の題名をつける作者のキャシーは、本当にうまいと思いました。
このアーバン・ファンタジーな雰囲気がすごく好きなので、次巻はいよいよイドリスに物語の舞台が移りそうで、イドリスが一体どんな場所なのかなど、楽しみなような、残念なような気がしています。

とにかく、登場人物の様々なロマンスに友情に戦いに、ととにかくとても贅沢なものがたくさん盛り込まれている、そんな素敵なファンタジー小説です。私は大好き。
日本での映画公開を機に、もっと読者が増えるといいなあと思う、そんなシリーズです。おすすめ。

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

プロフィール

マユリ

Author:マユリ
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ(タブ)

カテゴリ

未分類 (6)
紅茶・お茶・珈琲 (9)
海外ファンタジー (202)
ハイ・ファンタジー (105)
エブリディ・マジック (50)
アーバン・ファンタジー (22)
アニマル・ファンタジー (9)
ヒストリカル・ファンタジー (16)
国内ファンタジー (70)
異世界ファンタジー (58)
日常の不思議 (11)
神話・伝説・童話 (31)
神話 (4)
伝説 (9)
童話 (18)
ロマンス (14)
SF (29)
少女小説 (76)
ラノベ (26)
BL・JUNE・少年もの (20)
BL (14)
JUNE (3)
少年物 (3)
ミステリ・ホラー (38)
ミステリ (31)
ホラー (7)
古典・文学 (8)
現代小説 (7)
ヤング・アダルト・児童書 (114)
YA (58)
高学年 (29)
低学年 (27)
絵本 (34)
戯曲・詩 (4)
幻想・耽美小説 (7)
ハードボイルド (1)
伝奇 (2)
歴史・時代物 (4)
ノヴェライズ (4)
漫画 (5)
日記 (2)
このブログについて (1)
未選択 (2)
キャラクター文芸 (3)
エッセイ (1)

タグ

美青年 王子 美少年 王女 魔法使い 妖精 異世界 騎士 吸血鬼 双子 学校 海賊 ドラゴン 兄妹 女王 吟遊詩人 アーサー王伝説 中華風 三角関係 身分違い 兄弟 巫女 西洋風 人狼 姉妹 エリザベス朝 本・図書館 ケルト  妖怪 近未来 おすすめ 姉弟 切ない 神父・シスター 人造人間 天使 幼馴染 ユニコーン ヴィクトリア朝 お店物 RPG小説 軍人 和風 人魚 食べ物系 学園 中世 人形 ホームズ 

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

訪問者様