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2013-11

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カンヴァスの向こう側 少女が見た素顔の画家たち(フィン・セッテホルム)




(2013年読書感想73冊目)


フィン・セッテホルム 著  枇谷玲子 訳

おすすめ度★★★★☆(4・5くらい。おもしろかった! マイナーな本だけどもっと多くの人に読んでほしい。)


「(前略)くれぐれも手は大事に。君のはすごく特別なんだから」(p38)


なんとなく図書館で手に取った1冊。
なかなか王道なファンタジー小説なんだけど、なんともドキュメンタリー系の本っぽい題名と装画なのがなのが本当に残念。中身はすごく面白かったのに、これではなかなか手に取ってもらえなさそうだなあと思いました。

主人公の少女リディアは、ストックホルムに住む絵を描くことが大好きな12歳の女の子、不思議な少年と出会ったことから、日常が変化していき、ある日おじいちゃんと行った美術館で一枚の絵に触れたことから、その絵の時代にタイムスリップしてしまうのだった!

というお話かな。

レンブラントの「キッチン・メイド」、ベラスケスの「侍女たち」、ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」ドガの「バレエの教室」ターナーの「ノラム城、日の出」、ダリの「燃えるキリン」という6枚の絵画と6人の画家たちが、物語のキーになっていきます。
ベラスケスとか浅学なもので知らなかったのですが、(知ってても絵自体思い出せないのもあったり)それでも十分に楽しかったです。
出てくる画家は皆個性的だけど優しくて……。もし自分が絵が大好きで、過去の巨匠たちのもとにタイムスリップし、絵を教えてもらったり様々な時間を共有する。こんなにもうらやましく、自己を見つめなおす旅という意味では、こんなに素晴らしい体験はないと思いました。
YA世代の子供たちや、絵に興味のないような大人たちが、絵画の世界に興味を持つのにも最適な一冊だと思いました。

王道な話なんだけど、とにかく面白くて、ついつい読む手が止まりませんでした。
今度美術館に行ったときは、きっと違う視点を持てそうな、そんな素敵な本でした。個人的にはもっとたくさんの人に読まれてほしいです。美術館に行きたくなるような、出会えたことに感謝な1冊でした。

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コンチェルト・ダスト(中里友香)

コンチェルト・ダスト
コンチェルト・ダスト
  • 発売元: 早川書房
  • 発売日: 2013/09/20



(2013年読書感想72冊目)


中里友香 著  藤原薫 表紙絵

おすすめ度★★★★☆(やっぱりこの方の描く文章とかが大好き!)

(……血よりも熱く、蜜よりも甘い。きっと復讐は極上の麻薬だ)(p297)


今個人的に一番注目の日本人作家さん、中里友香さんの新作。
表記などがないですが、これ一冊では完結せず、続編があるようです。
という前情報を目にしていなかったら、きっとすごく悶々としていたかもしれません。
ユリアンとエミールという二人の少年を軸に、美しい魔女リオネラが鍵を握ることになる美しき復讐譚。というか、復讐の復讐の物語です。

端正な文章、みずみずしい登場人物、鮮やかな情景描写で織り成される少年の世界は、きっとそういうものが好きな人にはたまらなくそそるはずです。
表紙を見て感じるものがあれば間違いなくお勧めです。裏表紙にはリオネラが描かれていますが、こちらも美しい。

物語はコンチェルトのように2つの旋律が重なり合って、奏でられていきます。
最後ユリアンとエミールが出会ってからの展開が、個人的にはたまらなく好きでした。
萩尾望都さんがお好きな方にはたまらない世界観を描く作家さんです。
また、物語のカギとなる謎めいた美女、リオネラがいいです。
魔女という設定が、この小説を不思議とより幻想的なものにしています。
ゴシックでファンタジー、そんな小説です。

エミールが養蜂家に身をやつすという設定も興味深かったです。
甘く、復讐譚なのに爽やかともいえるみずみずしい世界観や文章が、たまらなく好みでした。
続編も早く刊行されるように願っています。
少年好きは必読の作家さんだと思いますよ。でも、女の子もかわいいです。
幻想的な、ちょっと不思議なお話で、今もその余韻に浸っています。

ヴァンパイレーツ13 予言の刻(ジャスティン・ソンパー)

ヴァンパイレーツ (13) 予言の刻
ヴァンパイレーツ (13) 予言の刻
  • 発売元: 岩崎書店
  • 発売日: 2013/10/22





(2013年読書感想71冊目)

原題 Vampirates: Immortal War
ジャスティン・ソンパー 著 海後礼子 訳 三浦均 絵

おすすめ度★★★★☆(やっぱりこのシリーズ大好きです。おもしろい。)


「わたしたち、みんながこの戦争の犠牲者よ。それぞれ、受けた傷はちがっても。目に見えない傷が、いちばんの痛手ということも多いわ」(p323)


吸血鬼×海賊物の大好きな児童書シリーズ、「ヴァンパイレーツ」の13巻目。このシリーズ、読者がどれだけいるかは不明なのですが、ここまで翻訳がされてくれてすごく嬉しい! ありがとう岩崎書店さん!
ある日グレースは、ダンピールの書という本の存在を偶然知ってしまう。その本には、シドリオがもたらしたこの戦争によって、双子のどちらかが死ななければならない、と予言されていて……??

このシリーズの魅力は、不死であり、本来変化とは無縁のヴァンパイアたちの状況が、目まぐるしいまでに変わり、成長していくことでしょう。敵であるシドリオ側のクルーたちも強いきずなで結ばれ、成長し変化しています。もう、シドリオたちのほうが魅力的なくらいです。

変化といえば、この巻で一番変わったのはムーンシャインですね! あまりのいい方向への変わりっぷりに、コナーと一緒にびっくりしてしまいました。ムーンシャインもいっていた通り、イイ人が多い中での同盟軍側での、スパイスになってほしいものです。
そして、敵であるジョニーを秘密に助けるグレース。この選択がグレースにとって悲惨な結果を生むような気がしてなりません。でも、ジョニーが滅びるのかとひやひやしていたので、この展開は、ちょっと嬉しかったです。
そして、ついに始まったローラの出産。はたして生まれてくる双子が、どんな鍵を握ることになるのか、こんなところで終わらせられたら、続きも読むしかない! という感じです。
ジャコビーも無傷ではないけど戻ってきたし、これからさらに複雑な人間関係が展開されそうで楽しみです。
それにしても私はステュークリーが好きだな。
本当、これからどうなっていくんだろう。続きもぜひ読みたいです。楽しみでなりません。

嘆きの女神の秘密(下) 妖精王女メリー・ジェントリー2(ローレル・K・ハミルトン)



(2013年読書感想70冊目)

原題 A Caress of Twilight
ローレル・K・ハミルトン 著 阿尾正子 訳 
おすすめ度★★★★☆(久しぶりに読んだけどやっぱりこのシリーズはおもしろい!)


「わたしがあなたを守るわ、フロスト」
「そんなことできるわけはない」
「あなたを、あなたたち全員を守ると約束する」(p175)



パラノーマル・ロマンス「メリー・ジェントリー」シリーズの2作目の下巻。
シーリーコートの王タラニスの重大な秘密を知ったメレディス(メリー)
そのタラニスが、クリスマス前に、メリーを執拗にクリスマスパーティーに誘ってきて……。

下巻の話はまあこんな感じです。

一年以上ぶりに読んだけど、このシリーズはやっぱり面白い! 読み始めたら止まらなくなってしまう不思議な魅力があります。それもこれも、きっとキャラクターが魅力的なんだなあとおもいます。
途中まで読んでて、ゲイレンとニッカが空気すぎると思ってましたが、二人にも活躍の場があってよかったです。
この巻は近衛兵たちみんなが等しく活躍していて楽しかった。キャラクターが魅力的な小説は、読んでてやっぱり楽しいです。

しかし、この物語はやっぱりメリーが一番魅力的!
オンディーアイス女王のもとに帰りたくないと心底思う近衛兵たちを、守られる立場でありながら逆に守ると約束したメリーが男前すぎて……! 一気にメリーがそれまで以上に好きになりました。
この巻も、シーの祝福を受けたキットーなど、見所は多かったですが、一番の名シーンはここだと思います。

強敵ネームレストの戦いを経て、かつての力や新しい力を手に入れたメリーたち。
新しい近衛兵が来ることも示唆されて、こんなところで終わったら生殺し! 次も絶対読みたい! と思っていたら、残念なことに邦訳はここで打ち止めです。
でもあまりにも続きが気になるので、三巻目の原書を買ってしまいました。
どうも本編自体刊行が止まってるようですが、続きもゆっくりと読んでいきたいと思います。
本当、お気に入りのシリーズです。

妖怪アパートの幽雅な日常 ラスベガス外伝(香月日輪)





(2013年読書感想69冊目)


香月日輪 著
おすすめ度★★★☆☆(なんてことはない平和な話でした。)


時とともに、変わらないものなど何もない。妖怪アパートだって、例外じゃない。 (p186) 


香月日輪の大ヒットYA小説、「妖怪アパートの幽雅な日常」シリーズの番外編。
古本屋と世界旅行に出かけた夕士。ラスベガスで担任の先生、千晶と合流し、忘れられない年の瀬を迎えることになる外伝のほか、妖怪アパートの住民のその後がよく分かる、ファン待望の番外編!

何というか、すごく平和な話です。大きな事件が起こるわけでもない、起こるとしてもそれは小さな事件で、何というかこのシリーズは本当に、「日常」を描いたシリーズなんだなあと改めて思いました。
日常の中における「気づき」みたいなものがすごく大切で、それを大事にしていこうと思えるお話です。

妖怪アパートのその後の様子は、なんだかいなくなってしまう人が多くて、すごく寂しかったです。
でも、別れがあれば出会いもあるように、いつか第二の夕士君が現れて、夕士君が画家や詩人の立場になっていくのかなと思えるような話でした。

正直、このシリーズを読むと思うところが、いいことも悪いこともたくさんありました。
心にすとんと落ちることもあれば、鼻につくところもあって……。
でも、妖怪アパートというものに出会えてよかったなと思っています。
この本は、一応作中に出てきた人物たちのその後が分かる感じで、本当に最後の一冊なんだなあって思いました。

短い話、なんてことはない日常ですが、そういったものが本当大事なんだなあと思います。
しかし夕士くんは本当恵まれすぎ! いつまでも自分が特別だということを忘れないでほしいなって思いました。まあ、感受性が素直なので、読んでて嫌な感じは受けないのですが。
妖怪アパートの漫画も出てるそうですね。それも読みたいような、もう妖怪アパートはこれ以上いいような、やっぱりいろいろな思いのこもったシリーズなのでした。
でも、とても面白かったです。

妖精は騎士のキスで目覚めて(汐原由里子)



(2013年読書感想68冊目)


汐原由里子 著 六芦かえで イラスト
おすすめ度★★★★☆(好きな雰囲気のお話だった! これからにも期待です)


「あなたにどんな事情があるのかはわからない。でも、自分を隠して偽って暮らしていたら、いつか本当の気持ちがわからなくなってしまうわよ。私、レオンがそんなふうになってしまったら……嫌だわ」(p113) 


2013年度のコバルトロマン大賞を受賞した新人作家、汐原由里子さんのデビュー作。
9月刊のコバルトの乙女ちっく通信で題名を見た時から、気になって仕方なかった作品です。だって、冷たくて熱い妖精ものですよ! これは個人的に読むしかないです。
結果、想像していたお話(パラノーマルロマンス?)とはちょっと違かったけれども、十分に好きなお話だし、読んでよかったと思える作品でした。

物語の舞台は妖精伝説が多く残るフランス。ヴィエーヌ座のヴィオラニストを兄に持つ少女マリエルは、座のパトロンであるラヴァル男爵に言い寄られていた。
ある時、妖精の住むという乙女の湖のある、リュジニャン伯爵家の敷地内に行くと、なぜか女装した男の人が倒れていて…!? その男性、女泣かせで有名な「氷の貴公子」の異名をとる、リュジニャン伯爵家のレオンだった…。

というお話かな。

何より私がこの作家さんで好きになったのは、文章の美しさです。色彩の表現とお菓子とお洋服の描写がきれいで…! うっとりします。
明るく元気なマリエルや、冷たくも優しいレオンといった主役二人はもちろん、マリエルの兄アランや、マリエルに横恋慕する嫌な性格のラヴァル男爵など、脇役も魅力的でした。特にラヴァル男爵は私の大好きな小物具合で! たまらなかったです。

フランスの伝承(妖精物語や湖の騎士ランスロットやイスの都など)を物語にうまく取り入れ、全体的にファンタジックな雰囲気が味付けされていて、それも好みでした。
ページ数自体はどちらかというと少ないのですが、マリエルとレオンのすれ違いの様子など、丁寧に書かれた物語は、十分な満足感がありました。
とにかく、良質な小説を書く作家さんだなあと思いました。この作家さんの作風、好きです。
これからもぜひこういったファンタジー的な小説を書いていってほしいものです。
残念なのは挿絵がちょっと少なく感じたことかな。格好いいというラヴァル男爵の挿絵もぜひ見たかったのに……。

美しい文章で紡がれる妖精ロマンスに興味のある方は、ぜひ一読してみてはいかがでしょうか? おすすめです。

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