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2013-12

竜の王女シマ―(ローレンス・イェップ)

竜の王女シマー (ハリネズミの本箱)
竜の王女シマー (ハリネズミの本箱)
  • 発売元: 早川書房
  • 発売日: 2003/04/15





(2013年読書感想80冊目)

原題 Dragon of the Lost Sea
ローレンス・イェップ 著 三辺律子 訳 増田幹生 挿絵

おすすめ度★★★☆☆ (3・5くらい。なかなか良質なファンタジーです。)


「でも、猛獣使いとたたかったときだって、塩におおわれた海底に落ちたときだって、勝ち目はあったかい?」ソーンは一歩もゆずらずに言った。「自分だけはかしこいと思ってるんなら、大まちがいだ」(p153)


中国系アメリカ人の作家、ローレンス・イェップの四部作、竜の王女シマ―の第一作目。
といっても日本では、このシリーズの刊行はこの1冊のみとなっていて、ちょっと残念です。なかなか良質なファンタジー小説なんだけどなあ。
ある日、宿屋の下働きの少年ソーンは、人間に身をやつしていた竜の王女シマ―を助けます。
シマ―は故郷の海を取り戻すため、魔女であるシベットを追っていたところ。
ソーンはシマ―に同行することを申し出ますが、二人は道中、喧嘩ばかりしていて……??

というようなお話かな。

面白かったです。短さの割に描写が丁寧で、読みごたえがありました。
また、シマ―の誇り高さと、ソーンの忠義っぷりがよかったです。
この二人が、喧嘩しながら徐々に友情を深めあっていく様が、ユーモアと感動を覚えることができ、とってもいいです。

振り仮名も多い新設設計なので、小学校中学年くらいから読めると思います。こういう本が、子供のファンタジー好きの萌芽になっていくといいなあと思える良書です。
だから本当に惜しいのは、続編の刊行が止まっていることですね。
ユニコーンに触れられたソーンの秘密、あるいは出生など、明かされていないことが多くてすごく気になってしまいます。
アメリカでは一応完結済みらしいですが、自分で原書買ってまで読みたいとは思えず……。いい本なんですけどね。

しかし、ハヤカワが児童向けのファンタジーを刊行していたとは知りませんでした。これから、ちょっと読んでみようかな?
ドラゴンのシマ―が誇り高くかわいいので、ドラゴン好きの方、東洋系ファンタジーが好きな方におすすめです。


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煌夜祭(多崎礼)

煌夜祭 (中公文庫)
煌夜祭 (中公文庫)
  • 発売元: 中央公論新社
  • 発売日: 2013/05/23





(2013年読書感想79冊目)

多崎礼 著 

おすすめ度★★★★★ (おもしろかった! 冬至の日に再読したいです。)


さあ、煌夜祭をはじめよう。(p290)


良質なファンタジー小説を書かれると聞いた国内の作家さん、多崎礼さんのデビュー作の文庫版。
この文庫には書下ろし短編、「遍歴」が同時収録されています。
冬至の日に合わせて読もうと思ったら、それがかなわず、読み始めたのはクリスマスイブ。
でも、読み終わったらやっぱり冬至の日に読みたかったなあと思いました。

冬至の日に語り部が集まって互いの知っている話を語って聞かせる煌夜祭。
魔物を追い払うという伝承があるこの祭りはなぜ始まり、何の意味があるのか?
これは美しく、そして切ない魔物と語り部の物語です。
トーテンコフとナイティンゲイルという二人の語り部が、様々な魔物に関する物語を語るという構成で物語は進み、それぞれの話が一つにつながっていく様は圧巻でした。
アラビアン・ナイトみたいな話の構成と思ってもらえればいいのかな?

とにかく面白く、一気に読んでしまいました。美しく、切ない話。魔物という存在を、ここまでいとおしい目線で語った小説にはなかなかであったことはありませんでした。最後のほうでは思わず涙腺が緩んだりして……。
これから読む方は、短編も収録されている文庫版がおすすめ。切ないけれど温かい気持ちになれます。

複雑に絡み合った登場人物や物語は、ファンタジーを読み慣れていても理解するのに時間がかかりましたが、最後の感動は本当に素晴らしい。
章立ても短めなので、読みやすくすらすらと行けます。
何よりも本当に、暗い冬の夜に読みたい、情緒のあるお話です。
多崎さんはほかにも沢山の本を書いていますが、どれも評判がいいようなので、これからまた著者のほかの本も読んでみたいなと思いました。年末にこんな本に会えたことを感謝したい、とっても素敵な1冊でした。おすすめです。冬至の日にまた再読したいなって思っています。

神の名はボブ(メグ・ローゾフ)

神の名はボブ
神の名はボブ
  • 発売元: 東京創元社
  • 発売日: 2013/11/20





(2013年読書感想78冊目)

メグ・ローゾフ 著  今泉敦子 訳 ワカマツカオリ 表紙絵

おすすめ度★★★★☆ (とにかく訳が秀逸! 面白かったです。)


「あなたはくずよ。なんの価値もない、くずそのものよ」(p212)


もしもこの地球の神が、わがままで怠け者で、自分勝手で、女の子とHすることしか考えていないティーンエージャーの男の子だったら!? もしその神様が、女の子に恋をしたら!?
この本、「神の名はボブ」は、まさしくそういうお話です。
地球に生活していて、理不尽なことばかり起こるこの世界の状況を、作者のメグ・ローゾフはこのような発想で説明づけています。

この本、おもしろかったです! 何よりも本当に訳が秀逸。邦訳ものにありがちなちょっと硬い訳ではなく、本当に今どきのティーンエージャーが使うような言葉で翻訳されているので、違和感なく読むことができます。

この世の神、ボブは本当にどうしようもない奴だけど、ある意味ですごく純粋で、憎めないのですよね。
何より、表紙絵のボブとルーシー、かわいすぎませんか!? もうこの表紙だけで、この本は素敵だなと思いますが、訳や読みやすい短い章立てなど、本当にYA世代の子に対して、親切な設定の良書になっていると思います。
ミスターBみたいな苦労性の真面目なキャラは人気ありそうだけど、私は断然ボブが好きだなあ。本当にすごくティーンらしいと思います。
それにしてもルーシーはちょっとかわいそうだったかも。ルークとうまくいってくれますように。
文章もきれいな印象で、とにかく本当によくできた本という印象でした。

そしてタイトル。原題のThere is No Dogというのは、犬がいないのではなく、逆から読んで神はいない、が正しいのですね。
宗教や戦争などの難しい問題に取り組み、なかなか奥の深い一冊でもあります。
面白かったです。ところどころくすっと笑える感じでした。
こういう本をYA世代にもっと読んでほしいな。

この本、ファンタジー小説に分類していいのか悩みましたが、たぶんアーバン・ファンタジーってやつだと思います。


湖の騎士ランスロット (愛蔵版 世界の名作絵本―民話と伝説)(ジャン=コーム・ノゲス)




(2013年読書感想77冊目)

ジャン=コーム・ノゲス 著  クリストス・デュリアル 絵 こまだしおり 訳

おすすめ度★★★★☆(大人のための絵本といった印象。)


ランスロットはその場を去ろうとしていた。心の中にあるこの美しく、力強い愛、そしておだやかになったこの愛のために、最後の日には神の許しを得られるかもしれないと思った。(p56)



アーサー王伝説といえば、ファンタジー小説の基礎の一つと言われ、日本でも根強い人気のある伝説です。
かく言う私もアーサー王伝説に魅せられた一人で、特にランスロットには格別の思い入れがあります。
この小峰書房の絵本のシリーズは魅力的なラインナップが揃い、大好きなのですが、まさかランスロット単体で絵本を出してくれるとは思いませんでした。

絵本ですが、文字が多く内容もちょっと難しいので、中学生くらいから向きの、大人の絵本でしょう。
そうして、少なくともほかに一冊くらい、アーサー王伝説の本を読んでおくと楽しめると思いました。
湖の貴婦人ヴィヴィアンに育てられたランスロット。
その幼少期から、生涯の想い人である王妃グウィネヴィアとのエピソードなど、ランスロットにまつわる有名なエピソードをチョイスして収録しています。

名誉や愛など、絵本ですが王道な中世騎士物語を堪能できる一冊。
絵本の絵のほうも、どれもまるで中世のタペストリーを見ているようでした。
純粋に王妃を愛し、それがしかし不倫であるがために自分は純粋な騎士にはなれないと思い悩むランスロット。しかしその純粋な愛のために、最期の日には神の許しを得られるかもしれないと思うランスロット。
そんなランスロットの愛に対する葛藤が魅力的な一冊でした。
グウィネヴィアはランスロットにとってのファム・ファタールだったんだなあと思います。
ランスロットに愛されているがために傲慢になり彼を試すグウィネヴィア。このことからして、二人の愛情の先に破滅があることを予感させてくれます。
なにはともあれ、世界の名作や伝承を絵本で読めるこのシリーズは本当に素晴らしく、これからの展開が楽しみです。
大人のための絵本を探してる方にはおすすめの一冊です。

混沌の叫び1 心のナイフ(上)(パトリック・ネス)

心のナイフ 上 (混沌の叫び1) (混沌の叫び 1)
心のナイフ 上 (混沌の叫び1) (混沌の叫び 1)
  • 発売元: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/30




(2013年読書感想76冊目)


原題 Chaos Walking The Knife of Never Letting Go
パトリック・ネス 著  金原瑞人 樋渡正人 訳

おすすめ度★★★★☆(久しぶりのSF小説。続きが気になります!)


「父さんがよく言ってた。前身あるのみ。内にこもるな、顔を上げろ」(p249)


世界中で高い評価を得ている、パトリック・ネスのディストピアン・SF小説、混沌の叫び三部作の第一部の上巻の感想です。題名はカオスの叫びと読みます。

そう、これはファンタジーではなくSF小説です。
私にしては珍しいチョイスだけど、妙に気になったので。
SF小説久しぶりに読んだけどわくわくした! そうしてちょっと怖かった!
人々が新しい暮らしを夢見て移殖した新世界。しかしエイリアンである処のスパクルとの戦いで、ノイズ菌という細菌をまかれ、そのおかげで男の半分と女は総て死に絶え、生き残った男たちは、ノイズ菌に感染。自分の考えが相手に伝わってしまうという症状に罹ります。人間だけでなく、動物も皆感染します。
もうすぐ大人の仲間入りを果たす主人公のトッドは、プレンティス・タウンというノイズだらけの街で育つのですが、ある時、全くの静寂に出会ったことから、町を追われることになります。
そこで、女の子と出会って?(女の子は全員死んだはずなのに……)

トッドが逃げなくてはいけない理由とは? 何が真実で、何が偽りなのか? そういったことはまるで分らないまま、とにかく逃げる小説です。おもしろいのかそうじゃないのかわかりませんが、不思議な吸引力があってすごく引き付けられます。
理由もわからないまま向けられる悪意。逃避行はうまくいかないことばかりですが、その中にも希望が一筋差し込んでいるような物語です。

SF小説は久しぶりに読んだけど、これはすごく続きが気になる! というか、あんなところで終わらせるとは! 続きも借りてきてよかったです。
色々な謎がまだまだ明らかになっていませんし、世界観もおぼろげにしかわかりません。
だけど、読ませる力のある作品です。
一体、プレンティス・タウンは何をたくらんでいるのか?

YA向けの本ですが、大人が読んでも楽しい1冊。もちろん、YA世代の方も、読んで面白い一冊です。
少年少女らしい心の機微や、大人たちの愛情を確かに感じられ、本当に完成度の高いシリーズなのだろうなと思わされます。
続きも近いうちに読みたいです。
そんなに厚い本でもないですし、気になる方は是非読んでみてくださいね。


ベリーカルテットの事件簿 薔薇と毒薬とチョコレート(青木祐子)




(2013年読書感想75冊目)


青木祐子 著  明咲トウル イラスト

おすすめ度★★★★☆(おもしろかった! これもシリーズ化されますように!)


ひとりの女の子であるまえに、メイドであれ。
それはわたしの座右の銘である。(p246)



ベテラン少女小説家、青木祐子先生の新作です!
私、ヴィクトリアン・ローズ・テーラーもまだ完読できていませんが、青木さんの作風がすごく好きで、新作は購入して追いかけることに決めていました。
よく訓練されているメイド、シャノンと、小説家で貴族の次男坊、ロイが織り成す、ヴィクトリアン・ミステリーです。

やっぱり青木先生の描かれるヴィク朝もの、いいなぁ。
登場人物がとにかく生き生きしていて、かわいい女の子もいっぱいで、読んでいて本当に楽しかったです。
主人公のメイドさん、シャノンは仕事がよくできるけど、実はすごく乙女な部分も持ち合わせてそうで、好感度高いです。
というかシャノンという名前が好きです! 川の女神さまの名前……。(ちなみにロイは王という意味だったはず)
シャノンの思いや秘密? などまだ明らかにされていない部分も多いですが、きっとこれからゆっくり、ロイと恋仲になってくれるのかしら、とそちらの進展も今から楽しみです。続刊希望です!
ロイもなかなかいいのですよね。不真面目かと思えばしっかりしていて、見る目があって……。
シャノンとロイの二人は、これからいいコンビになりそうです。

しかし、青木先生は女の子書くのが本当にうまいなあと思いました。
特に女の子の可愛さと怖さを同時に書くのがうまい! 可憐なのに怖い!
ミステリーとしてはまあ期待はしていなかったのですが、動機とかはさすがだなあと思いました。

何より、この時代にいきいきと働くメイドさんの様子が、丁寧に書かれていて魅力的でした。
ルースもエリザベスも好きです。
なにあともあれ、青木先生の新作がリアルタイムで読めることが嬉しくて! そうして期待にたがわない面白さですごくよかったです。
今後に期待する意味も込めて評価は☆4ですが、貪るように読んでいました。
本当、続刊に期待です。
シャノンの背景など、もっと判るといいな。

リリー骨董店の白雪姫 トワイライト・ルビーの夜明け(白川紺子)




(2013年読書感想74冊目)


白川紺子 著  宵マチ イラスト

おすすめ度★★★★★(完結。もっとこの作品世界で読みたかった!)



「クレア、僕を愛して」
やわらかな声が、クレアの胸を突いた。息を呑む。
「大丈夫だから。怖がらずに僕を愛してくれ」(p173)



今一番大好きと言っていいかもしれない少女小説、「リリー骨董店の白雪姫」の最終巻。
最後まできれいにまとまっていたけど、三冊で完結なのは本当に寂しい。もっと続いてほしかったな。と心から思わせてくれるような、素敵な少女小説でした。とてもよかったです。
今回の物語は、登場人物ほぼ総出の<エデン・ブルー>探しでした。

とにかく、各キャラクターへの好感度がうなぎのぼりだった一冊。
クレアはかわいかったし、ジェレミーも男らしく頑張ったし、セディお兄様の本心もわかってほろっと来たし……。
でも私が一番やられたのは素敵なバイプレイヤーの皆さまでした。バートと、ロビンとベアトリスとバーナード! 本当皆、それぞれ抱えてる思いにやられてしまいました。
しっかり者で弟想いのバートはぐんぐん好感度上がっていくし、ロビンも切なかったです。そしてそれ以上に切なかったベアトリス。そうしてかわいそうだったバーナード。本当、もっと皆の物語が読みたかった!特にバーナードはかわいそうすぎるな。どこかで報われてほしいのですが、無理かな……。

ベアトリスの切ない片思いに本当にやられてしまいました。こういうのに弱いのです。
ベアトリスはロビンを忘れられないだろうな、と思うと切なくて……。でもその切なさがたまらなく好みでした。
主役二人のカップルもとっても好きだしいいのだけれど、とにかくベアトリスとロビンの切なさにやられました、ロビンも本当に切なかった。最後の最後にやってくれたというか。でも、ロビンらしいというか。

丁寧な、少女小説らしい少女小説でした。正直ヴィクトリア朝ロンドンを舞台にしていますが、そこはかとなくファンタジーな雰囲気も好みでしたし、本当に出会えてよかったと思える1冊でした。
今はまだ、物語の余韻に浸って居たい。そんな一冊です。
素敵な本をありがとうございました!


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