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2015-07

『ペガーナの神々』/ロード・ダンセイニ 著




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(2015年読書感想43冊目)

ロード・ダンセイニ 著 
荒俣宏 訳   
おすすめ度★★★★★(幻想きわまる素晴らしい創作神話です!)


この本の概要

アイルランドの小説家で、軍人としての経歴も持つ、第18代ダンセイニ男爵の処女作にして代表作。
同一世界観の「ペガーナの神々」「時と神々」を収録している。
ハヤカワ文庫FTの5番目の本である。

本のあらすじ

偉大なる神々の中の神々、アマナ=ユウド=スウシャイは長いこと微睡んでいる。
アマナが寝ている間、他の神々は戯れで地球を創造した。
そうして気まぐれで、人々や地上にかかわるのだ。
これは神々と人間の、夢想のような神話である。


この本の読みどころ


幻想美きわまる、夢幻と諦観の神話群。それは砂漠に咲く花のように鮮やかで儚い。


ダンセイニの創作したこの神話群、ペガーナの神々は、まるで至高神アマナが微睡む間に見ている夢のような世界であり、幻想美の極致といった文章と、淡々とした無常観ににた諦観が絶妙のバランスで混ざって書かれた傑作です。
荒俣宏さんの翻訳も端正であり読みやすく、ただただダンセイニの描く夢のような世界に、読みながら浸っていればいい。
これがこの本の楽しみ方のような気がしてなりません。


感想

ダンセイニといえば、「エルフランドの王女」を読み、その余りの意味不明な、面白いのかもよくわからない世界に挫折したという思い出がある。「妖精族のむすめ」も読んだが、正直面白いのかわからない。
ダンセイニといえば私にとって、好きだけどなぜ好きなのかわからない。しかしとても惹かれる作家、でした。
でもこのペガーナの神々は素晴らしい。
神々と人間、それぞれの役割や生きざまを夢のように、淡々とむなしく、そのために時々悲しくて仕方なくなるような、そんな筆致で描いている。
でもそれは夢であり、真実など誰も知るところではない。アマナは作者=ダンセイニ自身の投影であろうかという気さえする。
そんな物語は、砂漠を彷徨う求道者が見つけた、美しい赤い薔薇のような印象を、読者に残す。
とにかく読めてよかった。ただその一言に尽きる傑作です。

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誰でもない王女さま(アンドリュー・ラング 作)




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(2015年読書感想42冊目)


アンドリュー・ラング 作 リチャード・ドイル 絵 
井村君江 監修 安岡みゆき 訳   
おすすめ度★★★★★(創作妖精物語としても、ドイルの挿絵たちも、非常に魅力的な一冊!)


この本の概要

19世紀のスコットランドの童話収集家として有名なアンドリュー・ラングが、妖精画家リチャード・ドイルの描いた妖精諷刺画に魅了され、ドイルの挿絵を並び替え、それに合うように物語を作ったのが「誰でもない王女さま」です。


本のあらすじ


昔々、とある王国の王様と王妃様は子宝に恵まれませんでした。
ある日一人のドワーフが王様に言います。子供を授ける代わりに、ニエンテをわたしにください!
ニエンテの意味すら知らなかった王様は、喜んで頷いてしまいます。
しかしそれは、授かることになる自分の娘、ニエンテ(誰でもない)王女のことだったのです!


この本の読みどころ


古典的でありながら先を読ませない不思議な物語。妖精国が見えるあなたはとても幸せ


アンドリュー・ラングが、ドイルの挿絵に感銘を受けて作られたという、挿絵が先にありきの物語であるので、ところどころ不思議な話になっていて、話の展開が読めない面白さがあります。
でも古典的なおとぎ話であり、美しい妖精物語であるという、なんとも不思議な物語です。
物語はニエンテ王女とコミカル王子の物語でありながら、この2人の様相が二転三転するのが面白いです。(挿絵との整合性をとるためと考えれば、さもあらなんなのですが、このちぐはぐ感が、いかにも妖精物語らしくて面白いです。
リチャード・ドイルの描く挿絵は、もちろん絶品!


感想



アンドリュー・ラングが、この物語を読める子どもたちは幸せです、と終わりの詩に綴ったように、読後は何とも言えない不思議な幸福感に包まれる素敵な本だ、と思いました。
妖精物語には、妖精の魔法がかかっていて、妖精が触れたのだろうなと思える不思議な魅力がありますが、この本は特にその要素が強いと感じました。
古典的な妖精物語の手法をとりながら、つじつま合わせのために出てくる突飛な展開が、逆にとても魅力的で、本当に不思議な絵本です。
絵本ですが、大人が子どもだったころの黄金の心に帰る、そんな大人のための妖精物語かなって思います。


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宝石の筏で妖精国を旅した少女 (キャサリン・M・ヴァレンテ 著)




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(2015年読書感想41冊目)

キャサリン・M・ヴァレンテ 作 水越真麻 訳   
おすすめ度★★★★★(読んでいる間中愛おしい気持ちになれる、現代のフェアリーテール!)


この本の概要

アメリカの作家、キャサリン・M・ヴァレンテによる著作で、2012年に出版されたものの日本語訳版。ハヤカワ文庫FTの、556番目の本です。
妖精国シリーズの一冊目に当たります。
22章の短い章立ての間に、幕間を二回はさみ、章の扉ページと表紙のかわいらしいイラストは、Ana Juanの手によるものです。
〈受賞情報〉アンドレ・ノートン賞,ローカス賞ヤングアダルト部門


本のあらすじ


セプテンバーは5月生まれの、本を読むことが好きな12歳になったばかりの女の子。
退屈な日々に飽き飽きしていた彼女のもとに、ある日<緑の風>さんがやってきて、彼女に行った。
妖精国の近くの海まで旅をしないか?
「行くわ!」即答でこたえたセプテンバー。はたして彼女にはどんな冒険が待っているのでしょう?


この本の読みどころ。


妖精国から帰りたくない少女セプテンバーと、妖精国の魅力的な住民たち。とにかく登場人物が魅力的!


この本につけられた帯の文句は、現代版「不思議の国のアリス」ようなものだったように記憶しています。
次から次へと起こる不思議な出来事、少しおかしい登場人物たちは、まさしく不思議の国のアリスです。
しかし、アリスが不思議の国からたびたび帰りたいとこぼしていたのと違い、セプテンバーは、妖精国が大好きで、妖精国から帰りたくないのです。
年相応の子どもでありながら、時には優しくて仲間想いで賢いセプテンバーは、非常に魅力的なヒロインであり、少女です。
そのほかにも、図書館に住む智竜(ワイブラリー)エーエル。マリード(願いを叶える魔人)であるサタディ、セプテンバーの冒険を後から追いかける宝石の付いた<鍵>きれい好きのゴーレムのライ、はては悪役である侯爵も、とにかく登場人物がかわいくて、読んでいる間中、愛おしい気持ちになれる本です。
翻訳も、それまでロマンス小説ばかり手掛けていた方だし、苦手なですます調の翻訳だし、だいじょうぶかな? と思いましたが、非常に温かみのある素敵な翻訳になっていて、むしろこの語り口が癖になってきてさえしまいます。
あと、とにかくイマジネーションが凄く、またネーミングセンスもばっちりです。
傘の付喪神に「半蔵」「朧」とつける辺り、日本にも数年間だけ住んでいたことのあるらしいヴァレンテ女史ならではで、格好いいです。


この本の感想


とにかく、素晴らしいイマジネーションで描写される不思議な妖精国の様子が秀逸で、お気に入りです。
最初は不思議で楽しい妖精国を観光するかのようなのんびりした冒険でしたが、徐々に徐々に、それだけではない、辛いものになっていき、最後の方では、予想外の展開続きに、読む手が止まりませんでした。まさかこんなお話になるだなんて! 辛い冒険を、それでも勇敢に乗り越えていくセプテンバーが、とにかく愛おしいです。

妖精国を訪れる人間は、「取り換え子」「さらわれ子」「迷い子」と三種類に分類され、それぞれに課せられた意外なルールも印象的でした。
非常に現代的な様相の妖精国ですが、その様子が楽しいと同時に、妖精国の本質が暴かれる場面では、とにかく面白いの一言です。

想像以上にあたたかく、想像力を掻き立てられる一冊で、そういう意味でも、この妖精国、あるいはこの本には、本当に妖精が宿っているのではないかなと思わされました。
児童書テイストの素敵な本でありお話です。
気持ちはわかるけど、なぜハヤカワ文庫FTで出したんだろう。
大型の装丁の綺麗な児童書とかで出せば、読者層的にも雰囲気的にも、よりよかったのにな。
でも、非常に素敵な、読書体験になりました。


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ゴブリン・マーケット(クリスティナ・ロセッティ 作)




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(2015年感想40冊目)


クリスティナ・ロセッティ 作 ローレンス・ハウスマン  絵 
おすすめ度★★★★★(良質な妖精書籍です! 本棚に飾っておきたい!)


この本の概要


ヴィクトリア朝時代の詩人イギリスの詩人、クリスティナ・ロセッティによって1862年に書かれた詩「ゴブリン・マーケット」に、イギリスの版画家、ローレンス・ハウスマンが挿絵を手掛けたもので、それを日本語訳したものです。
巻末にアーサー・ラッカムやマーガレット・タラントといった画家のカラーイラストや、妖精学者である井村君江さんの詳細な解説がついていて、とてもためになる、小さいけれど行き届いた、豪華な本になっています。


本のあらすじ


朝な夕な乙女を誘惑してゴブリンの果実を食べさせようとする、ゴブリンの隊商。
賢い姉、リジーはその誘惑をはねのけますが、好奇心旺盛な妹のローラは、誘惑に負けてゴブリンたちの果実を食べてしまって……。


この本の読みどころ。


清廉でありながらにじみ出る官能的な詩文で語られる姉妹の美しい絆


クリスティナ・ロセッティは、ヴィクトリア朝時代の女流詩人であり、その詩文の題材や文体などは、女流らしい清廉さを存分に感じられる。
しかしこのゴブリン・マーケット、それでいてなかなかに官能的な詩文や表現が散見し、その艶かしさは、清らかさを凌駕するときがあって、読みながら、話の展開はもちろん、詩文の表現に対してもドキドキしてしまう、なんてことが多々ありました。
詳しい話は井村君江さんの開設に詳しいのですが、しかしこの話は誘惑と救済をテーマにした、乙女である姉妹の美しい絆の物語であり、そこに男性忌避の思想が覗こうが、何とも言え愛、百合の花のようなこの詩作を、美しい日本語訳で読めることが、素晴らしいことです。
巻末には井村君江さんの詳細だがわかりやすい解説と、妖精画家であるアーサー・ラッカムやマーガレット・タラントの美しいカラーの挿絵が掲載されていて、妖精書籍として非常に良質で、秀逸だと思います。
本の大きさもA5 変形で、大きすぎず(むしろ小さ目)本棚の隅にこそりと秘密めいてしまっておきたい、そんな、乙女のかけがえない宝物になるような、本当に素敵な一冊です。
おすすめ。
表紙も素敵です、書影が出ないのが残念。

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FLESH&BLOOD11 (松岡なつき 著)




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(2015年読書感想39冊目)


松岡なつき 著 雪舟薫  表紙絵 
おすすめ度★★★★★(息もつかせぬ奪還編! 熱いです! 面白いです!)


この本の概要


日本のBL小説作家、松岡なつきさんの大人気シリーズ「FLESH&BLOOD」の11冊目に当たります。
この本で、今までイラストや挿絵を手掛けて雪舟薫さんがイラストを手掛けるのは最後になります。
出版社は徳間書店。
レーベルはキャラ文庫で、スペイン編も佳境の海斗奪還編になります。
雪舟さんのイラスト、大好きです! お疲れさまでした!


本のあらすじ

スペイン王宮で毒殺されかけた海斗は、療養のため一時パストラーナへ。
ビセンテにも情が移りかけたころ、二重間諜の修道士、ラウルの計らいで、ジェフリーと感動の再会を果たすが!?
ジェフリーたちは、海斗奪還のために猛反撃に打って出る!


この本の読みどころ。



敵であるビセンテを見殺しにできない海斗の苦悩

私はこのシリーズではスペイン組を凄くひいきにしていて、特にビセンテはシリーズ一のお気に入りキャラなのです。ビセンテの幸せは私の幸せくらいの勢いだったのですが、この巻ではそのビセンテに対して情が移ってきた、海斗の「ビセンテやレオが死ぬ未来が判っているのに、見殺しにすることは出来ない」という苦悩がとても丁寧に描かれていて、ビセンテが可哀想で仕方なく、それ以上に、おそらく初めて、海斗にものすごく感情移入しながら読んでしまいました。
海斗は、歴史を変えるようなことはしないと誓いながらも、ビセンテのために、こっそりその歴史を変えてしまうようなメッセージを残します。これで、スペインの負けが決まっていた例の海戦の行方にも、一石が投じられたのでしょうか。もうこの時点で先が見えなくなってきていて、本当に面白いです!
また、作者の松岡なつきさんは、シリーズ11冊目になるこの巻のあとがきで、主要人物はたぶん出そろった、と書いています。
最後の主要人物はアロンソ様かな。
だとしても、松岡さんの中にこの物語の壮大なプロットがあったんだなと感じられ、本当にすごいなと思てしまいます。
BL小説としては、海斗の結核疑惑もあり、管を重ねてもすがすがしいほど清らかな海斗ですが、よく考察された時代背景や歴史解釈、丁寧な心理描写などは、本当に素晴らしく、このシリーズはとても面白い! 名作だ! と断言できるものがあると思います。
心はジェフリーのものであることは揺るがずとも、ビセンテを慮る海斗のやさしさと、それに伴う苦悩は、この巻の素晴らしいところ路の一つでしょう。


海斗への愛を自覚したビセンテ。それはもはや恋ではなく、愛なのです。


この巻は、とにかくビセンテのやさしさと献身ぶりが際立つ一冊。
ビセンテも海斗も、ビセンテの感情は、弟に対する兄のような愛情なのだとお互いに感じていましたが、この巻で、ビセンテは海斗への愛情をはっきりと自覚します。
自覚したときには、それはもはや、恋ですらなくなっていて、深い愛情になっていたのです。
海斗の心が自分の物にならないのも、ビセンテは潔いまでに自覚しています。
それでも、海斗の傍にいることが許されるのは自分だけなのだと、しばりつけ、自由を奪うことでしか自分の愛を表現できないことを呪いながら、海斗を深く深く愛しています。
ジェフリーともナイジェルとも、全く違う愛し方。でも、とてもビセンテらしいと思います。


この本の感想


この巻は、スペイン組の個性も、イングランド組の個性や友情も、遺憾なくたっぷりと描かれ、それぞれの対比が鮮やかな一冊となっているとおもいます。ジェフリーも、海斗といるときより、ナイジェルやキットといるときのほうが活き活きしているように感じられて好きです。
というかこの巻でさりげなく一番愛されているのは、ナイジェルだと思います。ジェフリーのほのかな初恋の君という描写に、わあ、二人の過去のお話もすごく読んでみたい! などと思わされて仕方ありません。
そんなナイジェルも、自分に熱烈な愛情を寄せるキットに対しては鉄壁のツンツンで、キットがんばれ! と思う反面、ナイジェルはキットにはデレなくてもいいなどと思ってしまいます。

また、この巻ではスペイン組も新しい人間関係を築きます。
ビセンテとアロンソ様、フェリペ二世の寵愛を争う二人が友人になります。
人懐こく、人を魅了してやまないアロンソ様が、これからどう物語に絡み、ビセンテに、あるいはレオにとってどういう存在になっていくのかが楽しみです。
スペイン組も魅力的な人たちばかりです! ぜひ頑張ってほしいと思い、応援しています。
次の巻は、丸ごと一冊スペイン脱出篇になるのでしょうか。
海斗にかかる結核の疑いなど、暗い影も感じられ、続きが読みたくて仕方ありません。
しかし結核なら、海斗とジェフリーにはまたしても焦らされるだろうなと思うと、ある意味では本というに、BL小説だということを忘れられるというか、安心して読めるというか。でも、それでもこんなに面白いBL小説ってすごいと思います! このシリーズ大好きです。
世界史の知識に疎くても、面白いと感じられる。そんなところもいいな、なんて思ってしまいます。



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蛇神の女王 - ベルガリアード物語〈2〉(デイヴィッド・エディングス 著)




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(2015年読書感想38冊目)


デイヴィッド・エディングス 著 佐藤ひろみ 訳 HACCAN 表紙絵 
おすすめ度★★★★★(役者も揃い始めて、面白さも増す一冊。お気に入りです。)




この本の概要


アメリカの作家デイヴィッド・エディングスによって1982年に出版されたファンタジー小説。
「ベルガリアード物語」のシリーズ二冊目に当たります。
この本は2005年に出た新装版になります。
出版社は早川書房。
ハヤカワ文庫FTの383番の本になります。


本のあらすじ


強大な力を持つ至宝<アルダーの珠>を邪神トラクの弟子、ゼターに奪われ、その奪還を試みる探索の旅に出ることになった少年、ガリオンの旅は、アレンディア→トルネドラ→ニーサと、この巻で三つの国を巡ります。
新たな出会いや別れを経験し、成長したり二歩くらい下がったりを繰り返すガリオンは、自身の中の力の目覚めを意識したとき、いったい何を想うのでしょうか。



この本の読みどころ。


大人たちに護られた少年の旅。


ベルガリアード物語というのは、ファンタジー小説の金字塔であることは間違いないが、ファンタジー小説というものからイメージされるファンタジー小説とは、少し違うと思います。
多くのファンタジー小説は、少年少女が、ごく少数の師や大人と呼ばれる立場のキャラクターからの保護を受けるか、あるいは全く受けない状況で過酷な旅を強いられるのに対し、このベルガリアードは、沢山の大人たちが、少数の子供の安全や成長に気を配りながら、重要な使命を帯びて旅をしていきます。
これはある意味、非常にリアルなファンタジー小説における旅とだと思います。
そのため、主人公のガリオンは等身大の少年といった描かれ方をしており、その成長や情緒の揺らぎに素直に共感できると思います。
成長しつつも、二歩下がるような、そんなガリオンと、彼を見守る大人たちの眼差しというものは、この物語の大きな特色でしょう。
だからといって、物語の展開が安心でつまらないものというわけではありません。次々と様々な衝突や事件が起こり、ページをめくる手が止まりません。
特に後半、ガリオンがポルおばさんに反抗し、あるいは言い返され、そこから絆を深めるシーンは名シーンと言えると思います。


欠点を抱えて生きる新たなる仲間たちの旅への加入


<珠>を奪還するこの探索の旅は、予言の書に基づいた大人数のパーティで構成されていますが、この2巻でも新たな仲間を迎えます。
直情的で熱血過ぎるアレンディアの貴族、弓師の若者レルドリン。
自信過剰すぎる騎士の中の騎士と言われるボー・ミンブル人のマンドラレン。
そうして我儘すぎるトルネドラの王女セ・ネドラです。
皆、●●すぎるという美点とは言えない欠点を抱えた若者です。ですがレルドリンは単純でありながら非常に仲間想いであり、マンドラレンは自身を育ててくれた老貴族の夫人ネリーナを愛しています。セ・ネドラは我儘に見えて、非常に多くのことが見えている少女です。
作中で、強大な力に目覚めたガリオンが、永遠の人であるポルガラを非難し、自分が怪物になることを恐れるシーンがたびたび描かれます。ガリオンは不完全であること、欠点のあることが人間らしさであると考えていて、自身もそうであることを望みます。
神の意志の絡む壮大な戦いでありながら、その中で踊らされる弱い人間の強さを描く。人間肯定のファンタジー小説と言えましょう。


この本の感想


ベルガリアード物語は大好きな小説の一つで、何度も読み返しています。読み返すたびに新たな発見や新たな視点で物語を読むことができる、そんな素敵な本だと思っています。
私はこの本を、重要な使命を帯びた仲間たちの冒険の物語なのだと思って読んでいましたが、シルクが、「金で買えないものはない邪悪な都」と称したトルネドラの中にあってさえ、キラキラと光り輝くようなロマンスがあることに気づきます。ベルガリアード物語は、人間への愛、人間同士の愛、神の愛など、様々な愛情を描いた物語なのだと思います。
ガリオンとセ・ネドラの間で育まれている、ドキドキするような子供同士の愛情、ポルおばさんとダーニクの間に育まれる。静かな、深い愛情。マンドラレンとネリーナの間の、視線だけをかわすことが許されるような、秘めやかな愛情。そのどれもが読んでいる私としても本当に愛おしく感じられて、胸が締め付けられます。
次の巻では、一行は<アルダーの珠>の追跡を休止して、ベルガラスやポルガラの<師>が待っているという<谷>に赴きます。ここでもきっと、新しい出会いが待っているのだと思うと、わくわくしますね。早く続きが読みたいです。
ガリオンがたびたび、「ゲームの駒になってプレイヤーに動かされている」感じるこの旅ですが、はたしてそのゲームの勝者は誰になるのでしょうか?


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