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2019-11

世界のすべての朝は《特装版》/パスカル・キニャール



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(2017年読書感想31冊目)


1650年、サント・コロンブ夫人はこの世を去った。
後には彼女の夫である音楽家と、2人の娘、マドレーヌとトワネットが残された。
音楽家の演奏はやがてヴェルサイユの王にまで届くほどとなり、彼に弟子入りを志願するものも絶えなかった。ムシュー・ド・サント・コロンブは、悔恨の墓という楽曲を弾いた後、稀に訪れる妻の亡霊と対話する。
果たして、音楽とは誰のためにあるのだろうか。音楽とは何なのだろうか。
静かに、しかし烈しい愛と、生と死が語られています。

とても美しい本です。静謐で、物哀しく、神聖でありながらも、身体から肉体を剥がすような烈しい感情が波の様に押し寄せてくる本です。
物語は、とても静かに紡がれていきます。音楽の話なのに、そこに音はないような。しかし、実際には本書は沢山の音で溢れています。
「音楽が舞踏のためではなく、王を喜ばせるものでもないのなら、音楽とは何のためにあるのか、考えたことはあるか?」というようなセリフが、この物語の中に登場します。考えさせられます。
痛々しいまでに不器用で、繊細で、情熱的な老音楽家サント・コロンブの、生き様、心臓の音、その最期の1音まで、つまり彼の人生そのものも音楽そのものではないかと思わされ、一気に、しかしかみしめるように、物語に没頭してしまいました。
烈しい愛、狂おしいほどの静かな愛。物語の中には、エロスとタナトスといった主題が二重に絡み合いながら奏でられていくように感じました。
世界の全ての朝は、2度と帰らない。この本ではそういっています。
まるで、この本自体が仄暗い夜明け後から始まり、朝を迎え、昼を経て夕刻に暮れ、夜に沈み、そうして世界の全ての朝と同じように明け、帰ってこないものとして過ぎ去っていくような、そんな物語だったと感じます。
音楽とは、言葉を持たないものたちのための言葉なのだとしたら、死者の涙のような、靴紐のささやきの様なものだとしたら、音楽を作り、奏でる人間自体には、真に音楽は必要もないのかもしれません。
しかし、音楽がなければ、生きていけないのが人間でしょう。
何度も、泣きそうになりながらこの本を読み終えました。
きっと、2度と帰ってこないのに、またいつかやってきて過ぎ去っていく世界のすべての朝と同じように忘れられない、心に残る、美しい本でした。


この本の概要


著者 パスカル・キニャール
本(作者)の国籍 フランス
訳者 高橋啓
イラスト 手嶋勇気
出版社 伽鹿舎
レーベル 
ジャンル 文学
ページ数 160P
フォーマット 紙本
ノンシリーズかシリーズものか? 単巻。
なぜこの本を読んだか。出版社の姿勢に惹かれて
本の入手方法 出版社から通販で購入。

   

収録作品




内容

芸術とは誰の為にあるのか。
死者に届く音楽は何を老音楽家にもたらすのか。

こんなにも静かな激情
これほどにも高まる愛

ゴンクール賞に続き、2017年アンドレ・ジッド賞を受賞した現代フランス文学最高峰の作家が紡ぎ出す珠玉の物語。
芸術とは誰の為にあるのか――
亡き妻との間で、師弟間で交わされる深遠なる問答。

特装版は著者パスカル・キニャールの意を汲み、本編とコメンタリーブックを分けました。
コメンタリーブックには、若松英輔の美しい解説、岡和田晃の緻密な批評、翻訳家高橋啓のあとがきを収録したほか、新進気鋭の画家手嶋勇気による本編に沿った装画をフルカラーで収めました。
是非、この美しい本をお手元に。

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